ゲージュツ的しつけ

フェレットのしつけが書いたゲージツ的なしつけ術の数々。メール→fererere25@gmail.com

ゆれる時間と文章

 「とにかく俺は若造で、物を知れば知るほど知らないことにぶつかる」

 ベッドで横になりながら呟いてみた。対象のいない言葉は空疎だがそれでも空気を震わせてちゃんと音になる。

 青と白のチェック柄のパジャマを着て、十四時三十分。自分以外の世界はいわゆる普通の回りかたをしているようで、アフリカでは夜か明け方で、鹿が飛び跳ねたりギザギザの広い葉っぱが風に吹かれてガサガサ音を立てるのを半分埋まったミーアキャットがみていたりする。ぼくの部屋の向かいにある自動車整備工場からは車のボディを磨くときのような金属がこすれる音がするけれど、実際にボディを磨いているのかはわからない。

 「自分の書きたいことを書きたいままに書くことのグロテスクさについて考えていたんだ」

 誰にいうでもなく発した言葉はきちんと音声になっていたから、ぼくは確かに喋っていたらしい。一人で部屋にいると、思ったことと喋ったことの境い目はほとんどないから、音声だけが頼りになる。

 昨日からつけっぱなしのパソコンの電源ボタンがわずかに光って、生きていることを主張しているみたいだと思って、生きているという比喩を「活動しているように見えるという意味で使っているなぁ」と、そこだけ口に出して、パソコンを放置して部屋を出た。

 廊下をあるく、数秒の間で、しかし言葉は生まれた。

 ぐるぐる回る思考を止めるために自分の生み出す言葉の外側に出たいと思ってTwitterを開いた。「言葉は無限に現れてくるから。」

 『感情のままに喋っていいんですか?』

 『男性だからといって差別していいわけじゃない』

 「大学生の生活は守られるべきだな」と思った。Twitterの恐ろしいところは、ひとつの投稿をみた後、必ず自分の解釈や、言葉の生成があるところだ。

 「ひとつの投稿が140字で完結してしまうために、それを理解するためには自分の解釈を差し挟む必要がある」

 ぼくはそんなことを君に話そうと思いながら、洗濯機を横目で見る。君は多分どこかのお店でぼくの向かいに座りながら、

 「安易な回想を文章のなかに入れるのは果たしていいかわからないけど、想像力について話したね」

 とか言いながら緑色の液体を飲んでいるだろう。やけに長い羽のついたプロペラみたいな空調が天井をゆっくりぐるぐると回っているようなカフェで、店内は少し暗く、太陽光を取り入れているから不健康な感じはしないようなカフェでそう言うだろう。