煩悩のひと
「空(ソラ)とはなんでしょう?」
という問いかけに見えた。お昼の眠りから覚めた僕の目に入ってきたスマートフォンのホームページのタイトル。
ほんとうは「空(クウ)とはなんでしょう?」というページだった。空(クウ)とは仏教の用語のことだ。
クウソクゼシキとか、ゴウンカイクウとかのクウ。
読んでいた本の中に仏教の言葉が出てきたから寝る前の僕は調べていたんだと思う。
でも起きてからの僕はクウではなくソラの方が頭の記憶の上澄みに上がってきていたから、ソラと読んだ。
だって、ソラとはなんでしょう?の方がロマンチックな問いかけだから。
僕は生まれてからソラとは何か考えたことがなかったなあと気づいた。
クウが何かを考えたことはあった。はっきりと分からなかったから。
空即是色、五蘊皆空、とかいう言葉を聞いたことがあると思う。
空とはつまり色(シキ)であり、また色を含めた人間の認識はまた空である。
というような意味らしい。
聞いたことある人もない人も、ここで聞いてしまった以上「空(クウ)って結局どういう意味なの???!?!!!」という疑問が浮かんでしまうだろう。
空とは何かを聞こうと思ってたら、色とか五蘊とかまた新たな概念が登場するのだから。
分からないものを分からないもので説明されても分からない。ファルシのルシがコクーンでパージみたいな感じだ。仏教はだいたいこの論法な気がする。つまり言葉で理解できるものじゃないってことだろうと思う。ずるいよねそういうの。
いや、仏の心を理解したいと思う心もまた煩悩なのです。。。。
煩悩なのでしょうか?ぼくにはわからないことだらけだ。
そのくらいクウというのは難解だから、クウとは何かを疑問に思うことは自然だ。
でも、ソラが何であるかを疑問に思ったことはなかった。ソラは自明で、目に見えて存在しているからだ。
ソラはどうして青いのか、とかソラを飛ぶためにはどうしたらいいのか、とかソラにまつわる疑問はいくらでも出てくるけど、じゃあそのソラっていったい何?という疑問は、考えてみると今まで感じたことがない。
だから、ロマンチックだなあと思った。
かわいい女の子とそういう話をしたい。
「ねえ、ソラっていったいなんだと思う?」みたいな。
「青いもの。」とか「気持ちいいところ」とか「宇宙のこと?」みたいな感じで返答が返ってきて、ああでもないと話すことが理想だ。
というかむしろ女の子の方に問われたい。
「ソラってなんだと思う?」
もうその瞬間にキュンとくるだろう。3秒後には、恋に落ちる。
そういう機会はなかなか無いだろうけど、考えるのが大事だ。妄想はぼくを幸せにする。何故だか。言葉の上での妄想こそ今目の前に存在しない、クウの最たるものだと思うのだけれど、幸せになる。(五蘊皆空とは、色受想行識という人間を成り立たせる五つの要素すべてが空であるという意味。妄想はこの中の想にあたる。先ほどの妄想もまたクウです。)
煩悩の塊だ。ぼくは。108回の鐘では多分足りない。
まあそれでもいい。新たな疑問を感じるのが好きで、女の子が好きだ。好きなことをやるのが一番いい。いやなイメージは考えないでいると本当に健康になるのだという。
ソラとはなんだろう?
なんだか分からない。
オゾン層にレックウザが住んでいて、デオキシスが隕石とともにやってくるのだ。
小さいときはけっこう真面目に信じていた、ぼくの大好きなイメージです。