ゲージュツ的しつけ

フェレットのしつけが書いたゲージツ的なしつけ術の数々。メール→fererere25@gmail.com

切れ端

 しゃんしゃんと鈴の音がして、境内に隠れていたぼくはどうしてもその音の正体が見たくなったので、神社の床を支える石段をよじ登って、廊下の方まで行った。

 鈴を、ぼくはもうしばらく見ていない。いろんな鉱物は、例えば銅や鉄はいまでは戦闘機をつくるために接収された。鈴もまた同じだった。鈴が人一倍好きだったぼくは、悲しかった。

 しかし鈴と言ってもちいさくちりんちりんと鳴るものはあまり好きじゃない。熊よけのために登山家がつけているようなやつは、うるさいし、するどい響きが耳に入ってくるのを気に入らなかった。妹は好んで鳴らしていた。母は、鈴の音を喜んだ。

 ぼくが気に入ったのは神社に置いてある、結婚式で鳴らすようなしゃんしゃんと鳴る鈴だ。太い棒にいくつもの鈴が整然と並んでいて、澄み切った空気のようにしゃんしゃんと音がする、あの大きな鈴だ。音が空気をつたって耳に入ってくるような、空間を震わせるような、あの大きさにぼくは憧れていた。そしてその鈴の音がしたから、我慢できなくなったのだ。

 タッちゃんが鬼だった。かくれんぼはぼくの中で終わっていた。今はこの神を讃えるやしろの中へ入り込んでしまったのだから。ぼくはとてつもない悪い子供だ。

 

 

 ゼロからものを作り出すのはすごい。そのうえ経済的だ。

 クリエイターの人々は、自分の得てきた情報や、知識、感性、蓄えてきたそれらの資源、あえて言うなら知的資源を活用することでものを作り出す。知的な資源は現実の資源とは違い使い捨てではない。

 知的な資源を使って白紙に文字を、何もない空間に音楽を、まっさらなカンバスに絵画を創造するのは偉大なことだ。

 しかも、大変じゃない。なぜなら元手がゼロだからだ。

 製品をつくり、販売するのが極限まで単純化されたクリエイターのビジネスモデルだと思う。

 普通の企業なら製品を作るには元手が必要だ。素材をいくらかで仕入れて、それを加工する機械の値段や工場の運営費、人件費などがかかる。そして売り上げはコストを上回らなくてはいけない。売り上げマイナスコストが利益となり、その利益の何割かは売り上げの拡大を目指して投資に回る。

 しかしクリエイターの場合、コストの部分をめちゃくちゃ下げることができる。もちろん機材への投資や維持費などはかかるけど、無ければ無いで何とかなる。文章を書くなら紙とペンがあればいいし、音楽を作るなら楽器があればいい。

 そして何かを作れば、元手がないのに製品だけある状態ができる。

 失敗しても失うものはなく、売り上げが上がればそのまま利益になる。

 そう考えると、クリエイターこそ最強のビジネスなんじゃないかと思ってきた。

 エンジニア、職人、芸術家、ブロガー、ユーチューバー。売るためのマーケティングは非常にしんどいけどとにかく売り物があり、元手がない。その状態なら生活のコストを下げれば利益を生み出し続けることができる。