ゲージュツ的しつけ

フェレットのしつけが書いたゲージツ的なしつけ術の数々。メール→fererere25@gmail.com

理想の音楽と、奇跡的なライブの動画

 理想はいったい何なんだろう。音楽の理想。俺は自分が、雑踏の中で歌う歌手だって思ってる。路上や、カフェや、バーで。流しの歌い手っていうイメージにどうしても強く惹きつけられるというか、俺の中での自分のイメージはそれだけ。

 どうぶつの森とたけけみたいな業態が自分の中で一番しっくりくる。その場にいる人は音楽を聞いてるんだか聞いていないんだかわからないけど、実際は聞いていて、音楽はその空間を満たしているのだけど、それぞれの人々は自分たちの好き勝手にお喋りをしたりコーヒーを飲んだりしている。生活、言葉どおりの生命活動の中で、背後の空気に浸透している音楽。

 踊りの音楽のようなものがいいのかもしれない。バンドがワルツを奏でたら人はワルツを踊って、激しい音楽を奏でたら激しい踊りを踊る。それはお互いリクエストしたりするのではなく、何となくフィーリングで、その場の空気の中で必然的に奏でる曲が決まる。そういう踊りの音楽。音楽と空間と人間の運動が全て対等で、全てが感じ合うままに理想的な空間、そういうのを望んでいる。

 村上龍の小説の中には必ず音楽が流れていて、それは音楽が必要な空間に音楽があって、バンドだったり歌手の歌だったりタンゴだったりするんだけど、そういう音楽が理想に近く、音楽の使い方、音楽の在り方が理想に近いから俺は村上龍の小説が好きなのかもしれない。いや、これはもう確かだ。俺は村上龍の小説に現れる音楽の使い方に理想を感じている。ああいう音楽を奏でる人間になりたい。限りなく透明に近いブルーリュウがフルートを奏でるシーンがある。ああいう風に音楽を奏でたい。

 インターネットの中に空気感はない。坂本慎太郎がインタビューで語っていた、常盤ハワイアンセンターのハコバンみたいな音楽をイメージして作った、みたいなことをしたい。もうホールの上でステージに上がって司会の後で登場する、みたいなノリでは音楽ができないと思っている。

 寂れてるししっかりしてないしラグジュアリーではないけど人が集まらざるを得ない空間で演奏してる、なんかさびれたピアノマンみたいな、それこそbilly Joelpianoman みたいな空気感が欲しい。

 ラジオともちょっと違う。俺は好きに歌っていて、客たちは俺の歌を聞きにきたわけではなくその酒場とかそのカフェにやってきていて、そういう人たちのノリの中で演奏して、それが受けたり受けなかったり無視されたり感動されたりして、そういう日常が続いていきたい。だが今日本にそういう場は路上しかないように思える。

 ラジオのように次の曲はこれです...ありがとうございました。みたいな感じでもなく。俺は個人として居たい。ステージに上がりたいわけではない。俺と聞き手がフラットな場で存在して居て、俺はただ歌を歌うという役割を担っているだけで、それ以外の人はそれ以外の自分が得意なこと、自分のやることをやって世界が回ってるのが理想的だ。俺は自分のことを歌手だと思ってる。それも多分天性の。それは才能がどうとかじゃなくて、フラットな場にいるときに歌を歌い出すか出さないかの差で、俺は誰かと完全にフラットな空気感の中にいたら歌を歌い出す人間だ。だから自分は歌手だと思う。

 寂れたホテルのラウンジというイメージは最高だ。坂本慎太郎は最高だ。

 音楽を聴くために立ち寄った場所ではなくて、フラッと、酒を飲みにきたり踊りに来たりコーヒーを飲みに来た人とかが居て、そういう人が、なんかやるみたいだから聞いてみよっか、って言って聞いてくれるような歌手がいい。俺はぽつんとしていたい。そうしてバーの壁際でぽつんと歌いながら、バーにいるお客さんを眺めて、例えばそこで女と男が見つめあっているのを、見てみたい。 

p.s.

 理想的なライブっていうのがいくつかあるから、youtubeの動画を貼ります。

https://youtu.be/raty2lgSYHQ

知久寿焼セシウムと少女」


ここはどこ?って思う。なんかおっさんが酒飲みながら太鼓叩いてたりやめたり、子供が騒いでいたり、こういう空間と音楽の在り方がいいなって思う。

 

https://youtu.be/2f2jEx0lTfY

小山田壮平ツイキャス


なんか、酒場で一緒に飲んでる感じで、流しの歌い手のお兄さんって雰囲気がして、すごい良い。こういう感じでツイキャスできたらなって思う。理想的。


https://youtu.be/wUlblLp6cl0

ドレスコーズ「愛に気をつけてね」


最高すぎる。これは俺の理想とはちょっと違うけど、こうなれたらいいなって憧れる。本当にかっこいい。


https://youtu.be/L2PrQEtMveM

プラシド・ドミンゴグラナダ


これはオペラ歌手なんだけど、場末のバーみたいなとこでヘロヘロのピアノを弾きながら歌ってて、周りの興奮も伝わってきて、本当に素晴らしいと思う。お客さんも好き放題飲んでる感じするし。


https://youtu.be/iKF_HzlYUUk

Javier camarena 「グラナダ


おんなじ曲。歌ってるときの姿と、お客さんを巻き込んでいる感じがほんとうに美しい、奇跡的な動画だと思う。


自分がやったことで他人が喜んだり、自分の好きなものを他人が好きになるのがすごい好きです。あなたに気に入ってもらえたら、嬉しいな。そして自分の歌で、肩肘に貼らずに喜んでもらえるのが多分ほんとに嬉しいです。