思考の断片
これはいくつかの思考の断片
1.
透き通る湖畔の向こうがかすかに明るい。湖の周りを森が囲んでいる。木々の上には白い明かりと、透き通る紺色の夜が広がっている。透き通る空気の中で星は数え切れないほど輝いている。雲がかかって星座を隠した。吐く息が白い。冬だった。絵葉書のように典型的な冬だった。
一艘のボートが湖の中心に浮かんでいる。ボートの主はたえずオールを漕いでいるから湖の上に波紋がいくつも残る。冷たい、透き通る水晶のような水をかき分けてボートは進んでいた。湖面は鏡だった。落ち葉が浮いていた。様々なものを映し出していた。
湖面が写していたのは冬だった。木々だった。そして人間だった。自然だった。鹿だった。文明の気配は少しもなかった。ただ、ボートとオールだけが人工物としてそこにある。空間は丸く、四角く歪んでいた。斜め左上が突き出た傾いた5角形の家が見えた。湖面は様々なものを映した。オーロラがある。濃紺の空から光の柱がカーテンのように降り注いでいる。グラデーションを伴ったオーロラの向こうに夕方の街があった。
その街は海につながっていて、段差がいくつもあり、その間を石造りの道が繋いでいる。つながりの街だった。レンガと石で作られている。あらゆる建物の屋根はパステル調だった。ビルはなかった。オレンジを基調にした薄い色彩のパステルの街。その街の空に抽象画が浮かんでいる。
いくつもの図形に切り取られ、色がそれぞれ違っている。合わせ鏡の中のようにどこまでも続いているトンネル。そんな感じだった。その抽象画は秋だった。これらは全て、湖面の中に見えたものだ。
水の中にはまず冬があり、秋があった。街があり、絵画があり、オーロラがある。あれはきっと夏だろう。真っ赤な空の中で噴火する火山、その赤い、噴出される石の中に闇があった。闇は決して悪いものじゃない。星があった。闇の中には光があったし僕は怖くない。
2.
水平線の向こうは夜だった。夜は様々な光を包んでどっしりと海の向こうへ広がっていた。海の方向を見ているのはジュリだ。ジュリは彼方に目を向けたまま飲み物を欲しがったから、パラソルの下に置いてあるピーチフィズを勧めた。
「ちょっとぬるくなっちゃったけど、そんなに悪くないだろ?」
ジュリはピーチフィズをおいしいと言って何度も飲んだ。砂浜には複製されたチラシが散乱している。その中の一つを掴んで、ジュリは手を拭いた。
あなたは泳がないの?もう泳ぐには遅いよ。でも少し暑すぎるわ。それもそうだ。ゆらゆらと陽炎が砂浜を包んでいた。異常な暑さだ。暗い、静かな浜辺で、足元の砂が風に煽られてざわざわしている。
「ざわざわしてるよ」
「えっ、何が?」
砂が。そう呟いた時に僕のパラソルは風を受けて大きく開いた。あなたって変な人なのね。ジュリは肩をすくめた。
・予測できない言葉を徹底する
↓
12音技法的な。意味のコードからちょっと外れてみる。あくまでもちょっとだけ。
これが差異化である。
人の賞賛を求めている人が、誰とも深い関係が無いと思うのが癒しになる、なんて言ってもリアリティがない。
3.
アステカの人間がスペイン騎兵を小道で襲撃して殺したとき、心に大きな変化があったはずだ。
戦争は始まる前に勝者が決まっている。
国や共同体が戦時に疲弊するのは為政者の力量の問題とはまた別の部分で国力の差が原因でもある。
情報がほとんどすべてを決める。
判断が正確であるか、というのは情報が正しいかどうかで決まる。
アステカの事例を鑑みるに中央集権的な政治機構は危険である。
だが、中央集権的であるが故に各地方での独立は起こしやすい。
判断は必然性の中で起こる。情報から考えた必然性。
判断力というのは必然性の中でどれを選び取るかという問題でしかない。つまり必要なのは情報であり、したたかな意見を言えば、自分に有利な必然性に繋がる情報をどれだけ手に入れられるかが肝要だ。
そして情報から考えることは多くの人間がだいたい変わらない。
誰がどの立場にいようと、考えることはだいたい同じだ。必然性の中で生きている。
だから、新たな情報を作り出して必然性を混乱させるのは意義あることだと思う。
4.
インターネットを開くだけでなぜか苦しい