ゲージュツ的しつけ

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でかい声を楽しむ!超直感的オペラ入門(デルモナコ 衣装をつけろ)

 でかい声が好きです。

オペラは数あるジャンルの中でもひときわ欲望に満ち溢れた音楽です。そこにあるのは美しさと、声。特に、でかい声と高い声。それを聞いた時の快感は他の音楽では味わえない特殊な感覚です。

 そして私は、オペラを芸術としてじゃなく、エンタメとして感覚で楽しみたいのです。

 実際ヨーロッパの劇場では高い音が綺麗に出ると拍手が起きます。そういうものなのです。

 座って動かずじーっと聞いて、曲が終わってしばらくは余韻を楽しんで拍手する...。

 それでは聞く方も歌う方も疲れてしまいます。

 単純に、いい声の、いい演奏を聴いて、ブラボーと叫びたい!

ということでこのカテゴリで、声の言い尽くせない魅力を伝えるために、良い演奏を紹介したいと思います。

ここで扱う良い演奏とは、演奏家知名度や、人気、集客力に関係なく、独断と偏見で選んだいい声、超人的な声を存分に味わえる演奏のことです。独断と偏見と愛で選んでおります。

 

 今回紹介するのはこの動画。

https://youtu.be/aYywvcW29mk

<オペラ「道化師」より「衣装をつけろ」>

 (一番下に訳詞を掲載するので読むのがめんどくさい人はそれを見て、聞いて、楽しんでください)

<おすすめポイント>

①何と言っても高い声!開始30秒の劇的な高音が僕らを魅了してくれます。 

この金属的な響きの声を「アクート 」と言います。詳しくは後で!

②2分40秒からの言わばサビの部分。劇的表現の最たるもので、圧倒的な迫力です。

 

<曲の紹介>

1961年のイタリア歌劇団の来日公演の映像です。呼ばれたのは超一流の面々で、これでもかと壮大に音楽をやってくれました。激アツです。


このアリア(オペラでは、独唱のことをアリアと言います)は「道化師」というオペラの一場面。

 妻ネッダの浮気を知った旅劇団の座長、カニオが怒りと悲しみに身を震わせながらも、道化師というのはどんな時でも客を笑わせるのが仕事だと、自分の辛さを劇的に歌う場面です。

 イタリアらしい愛の歌ですね。浮気の相手を殺しそうな勢いでもありますが。


<歌手の紹介>

 歌っているのはMario del monaco(マリオ・デル・モナコ)さん。戦後のイタリアオペラ界で活躍した偉大なテノールで、熱く燃え盛る太陽のような声と熱狂的な演技で今なお大人気の歌手です。

 あまりにも響きの良い美しい声だったことから、ついたあだ名が「黄金のトランペット」。

 まあ難しい事は別としてとにかくでかくて、いい声の人です。

 この演奏はオペラ関係の人には伝説の歌唱として伝わっていて、まさに激唱!!という感じ。カニオの身の上の辛さどころか、聞いてるこっちが死んでしまいそうなくらいのある種の狂気すら感じます。

 愛、恋、恨み、そして狂気と破滅。あらゆる欲望が渦巻く劇場の中で全てをパワーに変えて歌ったかのような演奏ですね。大好きです。

 彼はこの演技に熱が入りすぎて、曲の最後の部分で本当に涙を流した、という逸話が残っています。時代を感じさせる話ですね。


<アクートについて>

この人のすごいところは中音域と変わらない豊かな太い響きのまま高音を歌ってしまうところですね。 

 この技術のことを「アクート 」と呼びます。

 イタリア人はこの音が大好きで、アクート の技術がないとオペラ歌手として認めてもらえません。

そしてこの人のアクートは完璧です。イタリアの聴衆が彼を愛したのもよく分かります。


<ちょっと専門的な話>

 アクートと呼ばれる技術は、声区(レジスター)における3領域、胸声(普通の声)、中声(いわゆるミックスボイス)、頭声(裏声)の中の胸声の響きで頭声区の音を出してしまう技術です。

 ミックスボイスとも深い関係があり、アプローチの方法もミックスボイスと同じように裏声から作っていくのが主流ですが、筋肉の動き方が大きく違っています。

 とはいえこの言葉はイタリア人が感覚でやっていたことを便宜的に名付けたものなので、各々の流派や、国によって解釈の仕方が大きく異なる言葉でもあります。

 いずれにせよ太い声で高い声出て凄いね!ってことです!

 掘り下げていくと発声の世界は途方もなく素晴らしい欲望の世界となっております。超楽しいです。なんか質問あったら聞いてください。所謂沼です。


<歌詞>

レチタティーヴォ(語りの部分)

〜45秒くらいまでのところ

芝居をしろだと!?こんなにも怒り狂ってる最中に?

俺は自分が何を言っているのか、何をしているのかもわからなくなっているというのに...

それでもやらなきゃいけないのか、我慢して、ああ!!

お前はほんとうに人間なのか?

いや、お前は道化師だ。


アリア(歌の部分)

45秒〜

衣装をつけろ。

おしろいを塗れ。

お客様はここに金を払って見に来るんだ。

もしアルレッキーノがコロンビーナを盗んでいっても*1

笑え、道化師よ。そうすればお客様は大拍手だ!

苦しみと、嗚咽を笑いに作り変えてしまえ、さあ

笑え!道化師よ!

お前の愛の終わりを!

笑え!お前に毒を注ぎこむその苦しみを!

 


*1

アルレッキーノとコロンビーナはこの一座が上演している劇の登場人物。

色男アルレッキーノが美人妻コロンビーナを誘惑するという内容のドタバタ喜劇。

劇の内容と現実が重なっていることを皮肉に表現している部分。めっちゃ悲しい。

 


<まとめ>

 オペラは欲望の世界です。その一端を垣間見ていただけたら僕は幸いです。

 こんな感じで今後も書いていっていいかなって思ってます。書くのめっちゃ楽しいです。疲れたけど。

読んでくださりありがとうございます!