ゲージュツ的しつけ

フェレットのしつけが書いたゲージツ的なしつけ術の数々。メール→fererere25@gmail.com

ゲージュツ的創作文

変な味

路地裏では雑居ビルの室外機がいっせいに動いているために、ゴウゴウとすごい音がする。彼はタバコを咥えながら、室外機の吐き出すなま暖かい空気のなかにいた。ここの空気のほうがタバコの煙より健康に悪そうだ。 彼は朝方が好きだった。深夜ではない。夜が…

生活の途上で、

ぼくらは途方に暮れながらも、とぼとぼ歩きで何処かを目指してる。いまだかつてないくらいの苦しみを今まさに更新し続ける生活の途上で。 忘れてしまいたい悩みも、投げ捨ててしまいたい苦しみも、もうこれ以上浸っていたくない嘆きも。 何もかもすべてがぼ…

いつだって幸福

たまごの形をした鈍色の鉄球は太陽を反射してオレンジ色の光を四方八方に振りまいていた。ぼくはそれを見て戦争の二文字を思い出す。ぼくが生まれたときから、戦争といったら第二次世界大戦のことで、それは戦国時代に、「先の大戦」という言葉が応仁の乱を…

人生オシャカサマ

不器用なのは罪かもしれないけれど、不器用にしか生きられない人もいる。わたしみたいにね。怒っている女の子につい「怒ってるの...?」なんて伏し目がちに聞いて、それがきっかけで(それ以前にも彼女のなかには色々な感情があったのだろうが)ラインの返信が…

わかんないね

耳にできた大きな腫れものを右手でいじくりまわしていると、赤い汁と一緒にプチッと音を立てて、正確には音を立てるような勢いでつぶれた。昨日は帰り道でカエルを踏んだ。幸いにして彼は死ななかったけど、あの出来事は彼の寿命を大幅に縮めたんだろうなぁ…

ゆれる時間と文章

「とにかく俺は若造で、物を知れば知るほど知らないことにぶつかる」 ベッドで横になりながら呟いてみた。対象のいない言葉は空疎だがそれでも空気を震わせてちゃんと音になる。 青と白のチェック柄のパジャマを着て、十四時三十分。自分以外の世界はいわゆ…

夏がふたつ

「わかって欲しいって気持ちが強くて、それであのこのことが嫌いになって」 おれはタコのジョーを殴りながら聞いていた。リビングには壊れた自転車と、植木鉢と、電灯があって、電灯は灯りがつかないまま上空に放置されていたので部屋は真っ暗ななか、女が喋…

大きな文字で書こう。「しちがつようかはやすみのひ」

何を書くべきかはわからない。べき、なんてものはない。「そもそも書くという行為自体が必要のないことなんだから。」そう言いながらぼくはベッドから身体を持ち上げている。 きみはもしかすると、「必要とかそういうことじゃないでしょ、書くってことは...…

切れ端

しゃんしゃんと鈴の音がして、境内に隠れていたぼくはどうしてもその音の正体が見たくなったので、神社の床を支える石段をよじ登って、廊下の方まで行った。 鈴を、ぼくはもうしばらく見ていない。いろんな鉱物は、例えば銅や鉄はいまでは戦闘機をつくるため…

会話 人称の移動 融合(カメラとか因数分解とかによせての)

鳥の羽がビルの間をななめに傾かせて通っていくのを見た。ふっくらとした体の年老いた鳩がぼくの足下で草を突っついている。何の気なしに言葉をつぶやく君の声をぼくは聞いた。正確には音を聞いた。音に意味が伴わなければ声じゃない気がする。ぼくは音の方…

煙は

便所からタバコの煙が灰色に上がって、チェーン店の大衆酒場の光に照らされて、また街灯の光に照らされて霧のように空へ飛んでいくのを僕はじっと見ていた。 もう店内では吸えない。 タバコは彼のものじゃなく、僕のものでもない。僕はタバコを吸わない。も…

終結しないこと、無意味さ。

夕暮れとか、砂漠の始まりとか、どうしてもたどり着かないもの。決してたどり着かないところへ向かってずっと歩き続けているひとがいる。 虹の根元へ行こうと思った理由を彼はこう話した。「行かないと鬱になって死んじゃうからです。」 でも、虹の根本なん…

おうだんほどう

駅の階段を降りて、目の前に大きな通りがある。横断歩道は5メートルくらいの横幅があって、ずらーっと人が一列になっているから、昼の時間の駅前は混むのだと分かった。 今日はよく晴れていた。僕はイメージを膨らませながら歩いた。人々が何かざわめきを発…

ハトを触らないし殺さない。

葛西に戻ってあの河川敷の葉っぱの匂いを嗅いでくればいいかと思った。 幻覚、幻聴と同じように幻臭というのもあるらしい。あるいは、記憶のなかにある匂いが急になにかの誤作動で立ち上がってくる 。 それはだいたい忘れがたい記憶で、幼い時のものだ。 幼…

ろじうらの完全な映像

暗い街灯が照らす広場に、一人の少女が立っている。少女は黒い頭巾をかぶって、ポツンと立っている。少女の背は135cmくらいだ。街灯は道をポツポツと照らしているけど、街灯と街灯の間は暗い。だから、街灯があるところは明るいのに暗く見える。暗い街灯だ。…

あなたは大丈夫です。

戦争が起こったらむざむざ死にに行くような感動中毒のやつらばっかりだ。 ワンピースに毒されすぎてる。男が泣くのがかっこ良いと本気で思ってる。 僕が臨界点に達した午前2時半に全てを破壊しようと思って自転車に乗った。 セブンイレブンのガラス窓を殴る…

フェレットのしつけ的な願い

大学に、動物と話ができる女の子がいる。嘘だろうと思っていつも一緒にいて見ていたのだが、迷い込んだ野良猫とも何か意志の疎通をしているのがわかった。僕が動物に伝えてほしいことを言うと、彼女は翻訳して伝えてくれる。それは身振りの時もあれば、目を…

心の中で言う

青色の炎に包まれて真っ逆さまに星が落ちている。凄まじいスピードで、真っ黒の中を駆け下りていくその放熱はやけに赤い尻尾を残して燃え上がる。とても綺麗だ。綺麗な没落が存在する。 「あれが流れ星になるんだよ」と、僕が喋ったら、地球至上主義だと言わ…

空間は伸縮可能である

りんごがいくつも落ちている。森の中に一ヶ所だけ開けた草原があり、木々に囲まれてぽっかりと開いたスペースになっているから、動物たちがここに来るのを待っていた。今日はそこにりんごがたくさん落ちている。この付近にリンゴの樹はない。 木漏れ日が差す…

童話、教訓めいた初夢

夢を見ました。あれは新宿東口の交差点でした。太陽は真上からカラカラとアスファルトを照らして、ビルのディスプレイが陽炎で揺れて妙にガチャガチャした色になっていました。駅前とビル街をつなぐ広い横断歩道の両岸に人々は立ち止まり、信号をにらんでい…

キュビズム

まっすぐに伸びる一本道があった。周囲は広大な草原で、平原の中にポツポツと、倒れこむ人のような木が生えている。視界の最も遠い場所で地平線が広がっていた。空気は今もカラカラに乾燥している。足元に続く道の上だけ草が刈り取られて肌色の地面がまっす…

おやすみのまえに

一滴の水が今ちょうど水面に落ちようとしている。一瞬のうちに水面に触れた水は水面との間にお互いの引力を発生させて一瞬だけ水柱を作るだろう。そしてぽちゃんと水滴は沈んでいき、いくつかの水滴を産む。その後で水面はなだらかに流れていく。 小学生の男…

エアコンの葬儀

エアコンは人生の真反対に存在している。動かないし、便利だし、呼びかけには応えてくれる。猫のような奔放さにお金を払うこの国の富裕層とはまた違った、完全で厳格なかたちを持っている。エアコンの頭脳は正確で、ミスをしない。その分だけ、遊びや柔軟性…

クリスマス・コンプレックス

Ⅰ. 街角に訪れるクリスマスの波を上手にかいぐぐって、時には乗りこなして、一人で歩き続けた。冬の夕暮れは誰かの誕生日を祝ってるわけじゃない。ただそこにあるだけの夕陽や、川や、街。ぼくはただここにいるだけだ。季節の中から逃げ出した遠くの船を追い…

思考の断片

これはいくつかの思考の断片 1. 透き通る湖畔の向こうがかすかに明るい。湖の周りを森が囲んでいる。木々の上には白い明かりと、透き通る紺色の夜が広がっている。透き通る空気の中で星は数え切れないほど輝いている。雲がかかって星座を隠した。吐く息が白…

どうぶつ的なけんちく

塀の上で、何匹もの猫が鳴いている。顔を上げて、まるで遠吠えでもするように。野良猫というのは大体近づくと逃げるのだが彼らは逃げようともしない。俺の両側に大きなコンクリートの塀が立っている。何十匹もの猫が遠吠えを続けている。空には月が浮かんで…

指輪と放浪

財産も蔵書も何もかもなくしてようやく自由の身だ。分厚いコートだけが俺の身を守ってくれるしどこにでもいける気がした。浅い眠りを起こすクラクションの音色に目眩がする。めまいがするほど明け方の街は明るい。今日は新宿の方へ行こうか。 定期券はあと一…

宇宙、船、どうぶつ、

どうしようもないほどに夕暮れだ。赤い、赤い。雲が焼き切れてしまったように千切れて浮かんでいる。地震の前兆のような切れ切れの雲、動物たちが騒ぐ様子はない。 とおくとおくの町の方から汽笛の音が聞こえた。少年はきっと宇宙の船の音だと思ったから、丘…

ガールとポップ

17. 誰にも会いたくないから、知らない誰かの家を渡り歩いた。インターネットで探せばいくらでも出てくる。いくらかの代償は支払う。それでもどこでもない所に居られる限りは、私は外にいた。私にとっての家なんてどこにもなかったし、それが心地よかった。 …

並行する夢

夜に慣れた目は、海の紺色の流れを見ることができた。波の上に無数の光の粒がきらめいて、それは星空のようだった。星は一つの粒だった。それはあの時君がつけてた星型のイヤリングみたいな形じゃない。世界はどこまでも細かい粒に分解できた。だから僕は君…